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現代社会はどこに向かうか
 見田宗介著「現代社会はどこに向かうか」を読んだ。人間の歴史において、古代ギリシャの哲学、仏教、儒教、古代ユダヤ教の目覚ましい展開があった「軸の時代」は、現在までの二千数百年間の人間精神の骨格をなす考え方が形成された時代であり、人間の歴史の第一の巨大な曲がり角であった。

貨幣経済と都市の原理が社会全域に浸透したのが「近代」であり、「軸の時代」とは、「近代」に至る力線の起動する時代であった。無限に発展する「近代」という原理の最後の純化形としての<情報化/消費化社会>は、それが全世界を覆いつくした(グローバリゼーション)によって、無限の発展の前提である環境と資源の両面において、地球という惑星の<有限性>と出会う。

産業革命以後、加速を重ねてきた人間の増殖率は1970年代に急激な原則に反転し、増殖の停止に至るまで減速を重ねており、人間は歴史の第二の巨大な曲がり角に入っていることを示す。
第一の曲がり角において人間は、世界の無限性を生きる思想を追求し、600年をかけてこの思想を確立してきた。現代の人間が直面するのは、環境的にも資源的にも生きる世界の有限性という真実であり、この世界の有限性を生きる思想を確立すると言う課題である。

人間の歴史はロジスチック曲線(S字形の生命曲線)における三つの局面、定常期の原始社会、爆発期の文明・近代社会、第二定常期の未来社会とそれらの過渡期である軸の時代Ⅰ、軸の時代Ⅱ(現代)で表わされる。現代社会の種々の矛盾に満ちた現象は、高度成長をなお追求し続ける感性の力線と、安定平衡期に軟着陸しようとする力線との拮抗するダイナミズムの種々相として統一的に把握できる。現代という時代の本質は、変化の急速な近代という爆発期を後に、変化の小さい安定平衡期の時代に向かって巨大な転回の局面を経験しつつあるということである。

現代という危機の時代を、もう一つの巨大な思想とシステムの創造の時代に転化することを通して、乗り越えてゆかねばならない。近代にいたる文明の成果の高みを保持したままで、高度に産業化された諸社会はこれ以上の物質的な「成長」を不要なものとして完了し、永続する幸福な安定平衡の高原として、近代の後の見晴らしを切り開くこと。だがそれは、生産と分配と流通と消費の新しい安定平衡的なシステムの確立と、個人と個人、集団と集団、社会と社会、人間と自然の間の自由に交響し互酬する関係の重層する世界の展開と、そして何よりも存在するものの輝きと存在することの至福を感受する力の開放という、幾層もの現実的な課題の克服をわれわれに要求している。

1973年と2013年の40年間における20歳代の青年の意識変化で最も大きいのは、「近代家父長制家族」のシステムとこれを支えるジェンダー関係の意識の解体というべき領域である。続いて注目される変化は、「生活満足度の増大」と「結社・闘争性の減少」ということである。青年層の著しい「保守化」と言われる現象の背景もこれらにあるとみられる。支持政党もなく選挙の有効性を信じず、政治的な活動は何もしていないという事実は、社会の深部からの構造的変容の中で、現在ある装置と方式の深い「失効」を示唆している。

20世紀型革命の破綻の構造は、次の三点に集約できる。①否定主義(とりあえず打倒!)②全体主義(三位一体という錯覚)、③手段主義(終わりよければすべてよし!)。
①否定主義は、ワイマール体制打倒を唱えたナチスやレーニンのロシア革命に見られるように、どのような社会を実現するのかという肯定性の構想なしに、とりあえずの打倒を唱導し扇動するもので、憎悪の罠から抜け出すことができない。
②全体主義は、経済システムの計画性が政治における一党支配=民主主義の否定、および思想・言論における統制=自由の否定ということを不可分に必要とすると思いこむことである。
③手段主義は、未来にある目的のために現在の生を手段とするということである。ソヴィエト共産主義のイデオロギーでは、「究極の未来」である共産主義社会は楽しく何の抑圧もない社会であるが、現在は未だ多くの現実的な障害があり、これらを打倒するために現在は「指導政党」による集中的な権力支配と思想言論の統制が必要であるとされる。

新しい世界を創造する時のわれわれの実践的な公準は、次の三つであると思われる。
 第一にpositive。肯定的であるということ。
 第二にdiverse。多様であること。
 第三にconsummatory。現在を楽しむということ。
この三つの公準を統合し、具体化したイメージの一つを提起するならば、<胚芽をつくる>ということである。新しい胚芽となる素敵な集団、素敵な関係のネットワークを、様々な場所で、様々な仕方で、至る所で発芽させ、増殖し、緩やかに連合するということである。一人の人間が一人の人間を説得すると言う地道な仕事が、やがて反核の巨大な力を形成するという人間の連鎖反応の発想を、新しい時代の見晴らしを切り開くための<解放の連鎖反応>としても置き換えることができる。

一人の人間が一年間をかけて一人だけ、本当に深く共感する友人を得ることができたとする。そして10年をかけて10だけの小さい素敵な集団か関係のネットワークがつくられる。新しい時代の「胚芽」のようなものである。次の10年にはこの10人の一人一人が同じようにして10人づつの友人を得る。この連鎖が続けば30年で1000人、50年で10万人、100年で100億人となり、世界の人類の総数を超えることになる。
[2018/10/04 16:44] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
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