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政権の暴走を防ぐ選挙制度は比例代表制
 安倍政権の暴走はなぜ可能なのか?日本は議院内閣制を採用しており、衆院選挙で選出議員が多数となった政党の党首が首相となり、内閣を組閣し幹部クラスの官僚を指名し、行政府を構成する。立法府である国会も多数政党の議員が過半数以上であれば、野党が反対するいかなる法案も最終的には採決を強行することで成立させることができる。与党議員は党議拘束を受けて自動的に賛成せざるを得ないし、衆院議長も多数政党の所属議員から選出されるから、与党法案成立に反対することはない。

つまり選挙に勝って多数政党になれば、その党首=首相は行政府も立法府も思いのままに動かすことができるから、議院内閣制は政権が暴走しやすいシステムと言える。現在の選挙制度は小選挙区比例並立制だが、このうち小選挙区制は圧倒的に与党に有利にできている。衆院はすべて一人区だから与党は一人の候補者を公認するだけでよいが、野党は複数の政党が各々独自に候補者を公認すれば票が分散し、与党の候補者が明らかに有利になる。複数の野党が一人区の候補者を一人に絞る調整は一般に困難であり、このことが与党を大勝に導く主原因なのである。

従って、小選挙区制におけるこの構造的欠陥を是正するには、都道府県の行政区割に基づく小選挙区制を廃止し、日本全国を一つの選挙区とする全国区制に変革するべきである。そうすれば与野党に公平なシステムとなり、一人一票が貫徹して憲法違反の投票格差もなくなる。日本の政党政治では党執行部の権力が圧倒的に強く、個々の議員の発言力が弱体化しているので、個々の候補者の個性や能力に基づいて投票することにあまり意味がなく、どの政党の候補者かで投票を決めるしかないように思える。
[2019/01/02 20:04] | 選挙制度 | トラックバック(0) | コメント(0)
「完全版1★9★3★7」
 辺見庸著「完全版 1★9★3★7」を読んだ。本書は「凶兆」ばかりがまざまざと目につく現在、「未来はかってなく巨きな危機に瀕している」という衆人のいつわらざる予感と同様、これほど「希望絶無」の状況はなかったと感じる著者が、1937年の南京大虐殺を核とする歴史的過去を偏執的に追及することで、現在の酸鼻を極める風景の祖型は1937年にあったという確信に至った魂の叫びを表わしたものである。

解説者の徐京植によれば、この作品は、戦争、虐殺、差別などについての事実認識を読者に求めているのではない。「事実」というなら、それは改めて言い立てるまでもなく明からだからだ。問題なのは「事実」の有無ではなく、明々白々な事実の前に立たされながら、それに背を向け「スルー」することのできる心性である。

安倍首相は東京オリンピック招致演説で、福島原発事故は完全に「アンダーコントロール」であると、あまりにも厚顔無恥な虚言を弄したが、大多数の人々が虚言を虚言と知りながら歓迎し喝采した。日清、日露戦争、満州事変、日中戦争、太平洋戦争当時から、おそらく人々はこうであったのだろう。ダマされたのではなく、それを自ら望んだのだ。自己の利害や保身のために、多かれ少なかれ国家や軍部と共犯関係(辺見のいう黙契)を結んだのである。
[2018/12/18 18:38] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
日米安保体制史
 吉次公介著「日米安保体制史」を読んだ。本書は、安保体制を内在的に批判する視点に立ち、現在までを射程に収めた安保体制の通史である。安保体制の歴史的な経緯については特に目新しい記述はないが、2015年4月訪米時の安倍発言「安保体制は希望の同盟」に対する六つの批判は注目に値する。

1.15ガイドラインや安保関連法に関する国民的合意が不充分である。集団的自衛権行使や地理的制約のない自衛隊の米軍後方支援は、米国の世界戦略への日本の関与を深め、安保条約の枠組みが大変化することになるが、政府の明確な説明はない。国民的合意のないままで犠牲者が出た場合、国民の不満が高まり安保体制に対する信頼が揺らぐ。

2.米国が誤った戦争を起こした場合、日本がどう対処するかについての議論が深まっていない。これまでの歴史を見れば日本政府が米国の不当な要求を退けるよりもむしろ無批判に追従する可能性が高い。

3.安保体制の強化が国際緊張を高め、安全保障のジレンマにつながる恐れがある。抑止力は国家間の諸問題を解決するものではなく、結局は対話と妥協が必要となる。

4.米国との情報共有を強化するために2013年に制定された特定秘密保護法で安保体制の「不透明性」が高まった。政府は安保関連法と特定秘密保護法を一体運用する方針であり、集団的自衛権を行使する根拠が国民に示されない可能性がある。「不透明性」は安保体制に対する国民の支持を低下させるリスク要因である。

5.国際貢献と安保体制の強化が混然一体となっている。両者を峻別しなければ、国民が国際貢献に対して「対米追従」との不満を抱き、安保体制に不信感を持つ。

6.深刻な沖縄米軍基地問題がある。地位協定の改正に向けた動きはなく、「不平等性」の抜本的な是正への道筋は見えないままである。東アジアの緊張、日本におけるナショナリズムの高まり、普天間移設問題の迷走で本土と沖縄の分断が進み、「危険性除去」という原点の共有さえ難しくなっている。
この問題を置き去りにしたまま、安保体制の「グローバル化」と「対称性」の追及に腐心することが、果たして日米関係の発展につながるのか。今一度問い直されるべきだろう。
[2018/12/05 14:33] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
安倍でもわかる保守思想入門
 適菜収著「安倍でもわかる保守思想入門」を読んだ。本書は安倍という個人を「拡大鏡」として利用しながら、今の日本がダメになってしまった原因を追究したものである。結論的には「近代」が理解されていないからで、同義的には「保守」が理解されていないからであると述べている。

著者は安倍が「保守」の対極に位置する人物であり、大衆社会の腐敗の成れの果てに出現した「左翼グローバリスト」に過ぎないと主張しているが、新自由主義のグローバリストはともかく安倍が左翼というのは少し違和感がある。安倍の常套句「美しい日本」や「日本を取り戻す」、靖国参拝や偏執的改憲志向、アメリカ隷従、反共といった言動を見れば、権力主義的親米右翼という方がしっくりくる。あるいは、何の主義主張もあるわけではなく、権力維持のためにまわりの取り巻きや支持母体の提言を思いつきでつまみ食いしているだけの裸の王様と言った方が良いかも知れない。

各章の構成は、冒頭のコラムで代表的な保守思想家を紹介し、国会や講演会などでの安倍の様々な言説を取り上げて、安倍が保守の対極に位置する人物であることを示している。安倍の言説に対する著者の批判はすべて適切でうなづける。

本書を読んでよかったのは、私の「保守」や「保守主義」に対する理解が間違っていたと気付かされたことである。本書によれば「保守」とは大事なものを「保ち守る」ということでその基盤になるものは常識で、常識は伝統により生成される。保守はゆっくり慎重に改善する漸進主義になる。しかし、急激に世の中が変わっていく中、意識的に常識を維持し愛着ある日々の生活を守るために保守主義が発生する。保守主義の本質は「人間理性に懐疑的であること」である。抽象的なものを警戒し、現実に立脚する。立憲主義は保守思想の根幹である。
[2018/11/27 15:26] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
ドーナツ経済学が世界を救う
ケイト・ラワース著「ドーナツ経済学が世界を救う」を読んだ。本書は、現在主流派の経済学が50年以上前に書かれた教科書(典拠学説は200年前のもの)に従っている古色蒼然としたものであり、21世紀の問題を解決することはできないと主張し、これからの経済学には何が求められるかを広い視野に立って描き出したものである。

人類の長期的な目標を実現できる経済思考を模索し、それらの目標を図で表そうとしたらドーナツのような図ができあがった。同心円状の二本の大小の輪が基本の要素になる。小さい輪―社会的な土台を示す―の内側には飢餓や文盲など、人類の窮乏の問題が横たわっている。大きい輪―環境的な上限を示す―の外側には、気候変動や生物多様性の喪失など、危険な地球環境の悪化がある。それらの二本の輪に挟まれたところがドーナツ本体になり、地球の限りある資源ですべての人のニーズが満たされる範囲を示す。このドーナツの中に入るための経済学の考え方を明らかにする。

21世紀の経済学者の七つの思考法
第一は「目標を変える」。果てしないGDP(国内総生産)の成長を目指すのではなく、地球の限りある資源の範囲内で、すべての人が人間的な生活を営めるようにすることを目標とする。つまりドーナツの中に入ること。

第二は「全体を見る」。視野の狭い極めて限定的なフロー循環図のみで経済の全体を説明するのではなく、経済は社会や自然の中にあり、太陽からエネルギーを得ているものとする新しい経済の全体像を描く必要がある。

第三は「人間性を育む」。20世紀の経済学の中心的肖像である合理的経済人ではなく、社会的適応人としてドーナツの中にすべての人を入れるという目標の実現性を大幅に高められるようなしかたで人間性を育むこと。

第四は「システムに精通する」。19世紀の過った力学的平衡の喩えに基づく市場の供給曲線と需要曲線が交差した図ではなく、シンプルな一組のフィードバックループで表せるシステム思考の図=動的システムを経済学の中心に据えることで、経済を絶えず変わり続ける複雑なシステムとして管理するべきである。

第五は「分配を設計する」。20世紀にはクズネッツ曲線に基づき、不平等は拡大、縮小を経て最終的に成長によって解消されるとされていた。現在では、不平等は経済的必然ではなく、設計の失敗によることがわかっている。代表的な分配法の一つであるフローのネットワークでは、単なる所得ではなくあらゆる富の再分配と金を生み出す力の再分配の方法が模索される。

第六は「環境再生を創造する」。これまでは環境汚染もクズネッツ曲線に基づく不平等と同様に、悪化、低減を経て最終的には成長によって一掃されると言われてきたが、現実には環境破壊はあくまで破壊的な産業設計の結果だ。21世紀には、循環型―直線型ではなく―の経済を創造し、地球の生命循環のプロセスに人類を完全に復帰させられるよう、環境再生的な設計を生み出せる経済思考が求められる。

第七は「成長にこだわらない」。主流派の経済学では終わりのない経済成長が不可欠のこととみなされている。この自然の摂理に逆らおうとする試みは、高所得・低成長の国々で根本的な見直しを迫られている。現在の経済は、繁栄してもしなくても成長を必要としている。わたしたちに必要なのは、成長してもしなくても繁栄をもたらす経済だ。そのような発想の転換ができれば成長への妄信が消え、どうやって成長依存の経済を変えられるかを探れるようになる。

21世紀の課題は、人類がドーナツの安全で公正な範囲の中でバランスのとれた繁栄を遂げられるよう、「豊かな生命の網のなかでの人類の繁栄」を推進できる経済を築くことだ。そのためにはあらゆる経済が社会の中に、生命の世界の中にあることに気づくと同時に、家計、コモンズ、市場、国家の四者すべてが、多くのニーズや要望を満たす効果的な手段になり得ることに気づく必要がある。そうすれば経済の複雑なダイナミクスを管理し、現在の分断的で非環境再生的な経済を、分配的で環境再生的な経済に設計し直す道が開けてくる。


本書は上記の七つの思考法に基づく実施例を提示しながら、さらに詳細な説明をしている。経済学者だけでなく政治家や企業経営者、自治会運営者、一般市民のすべての人々が読み・考え・実行するべきだと思える。
これまでは経済学は予測能力がなくて科学とは言えない無価値な学問だと思っていたが、本書を読んでこの思考法が社会で実現されるのなら、まんざらでもないと考え直した。
[2018/11/21 20:28] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0)
政治ウォッチング


政治が右傾化し民主主義が危うくなっている。主権者である国民は、日々政治の動向を監視するとともに、自ら学び、行動する必要がある。本ブログは、それらを実践する場としたい。

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本人=主権者として政治に関わり、代理人=議員・閣僚の言動・政策を監視する。

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